一筋縄ではいかない現場 – 第十一回女流棋士の知と美 Live Production Report

台風の接近が危惧される 2022年9月19日(月・祝)、この日程は予め決まっており開催か中止かのどちらかの判断しかない。
進路予報では関東への台風直撃が無く予定通りの開催となる。ただし、当日の午前は時折、強い雨が降る不安定な天候です。

  1. 搬入は AM 11:00 から。
    新宿高島屋の駐車場入り口から車を入れて搬入口(地下)で荷物を降ろす。
    その後、そのまま高島屋の駐車場に車を駐車しようとしたが駐車場は既に満車。祝日とはいえ午前中から満車になるとは予想していなかった。
    予め調べておいて別の駐車場に車を停め会場のサザンシアターへ向かう。歩いて3分ほど。強い雨だ。想定よりも5分遅れ。
  2. 現場の劇場(7F)にて荷物確認。イベントスタッフ若手に荷運びをお願いする。
    荷物は全て搬入口から舞台袖に到着している。舞台下手で使うのだが荷物は上手の方に置かれていた。設営場所の情報が共有されていないぐらいは掠り傷にもならない軽いアクシデント。それでも2分ぐらいは時間のロス。
  3. 少しずつ機材を設置する。
    なにせ大小合わせて80点以上の機材を構成しなければならない。時間との勝負。
    舞台下手の袖が思ったよりも暗くケーブルを差し込むのに苦労する。スマホのライトを使ったりする。想定外だった。ミニライトを用意しておくべきだった。
    なお、上手の方は割と明るい。ただし、機材を設置するスペースが無い。
  4. このイベントの一番の難点となる天井カメラの設置を行う。
    10分ぐらいで終われると思っている人がいるようだが、頭上6m に水平、垂直に設置するのは相応の時間が掛かる。
    正式な名称は分からないが、舞台の吊バトンにカメラを取り付けて微調整を繰り返す作業となる。もちろん、バトンを上にあげた状態で微調整はできないから、都度、バトンを下に降ろして調整しなければならない。将棋盤の方を数ミリ程度で動かせるが、畳の対局場を動かすことはできない。前後左右のバランスを考えての設置は頭の中で三角関数を思い浮かべたりもする。
    今回はこのために新しい機材を新調したこともあり、30分ぐらいで何とか終わらせることができた。とはいえ、パーフェクトではない。

    設置した天井カメラは客席からは全く見えない。カメラ筐体そのものが黒いこともあるが、舞台の前幕に隠れている。視界に入らないから気にならないというのは重要だ。
  5. 次の難点は舞台後方からステージ全景を映すカメラの設置である。
    カメラ設置自体は置くだけなので簡単だが、客席最後列の場所からミキサーがある舞台袖まで映像を持ってこなければならない。直線距離で30m ぐらいだろうか。
    有線を通す選択肢もあるが満員の客席の中を通したり、あるいは一度通路を経由するにしても踏みつけや引っ張りのリスクが大きい。そこで、常々使っている Hollyland MARS 300 PRO Standard の出番である。なお室内利用ではありますが、ちゃんと V1.0.9.1.9 にアップデートしています。
    今回も4時間ほど、全く問題無く稼働してくれました。4Kの必要性が今のところないため上位機種の購入は考えていません。

    (後方からステージ)
  6. 次に対局者を横から移す対局者カメラ2台の設置です。
    これは私に全く余裕が無かったので、某イベントをスキップして駆けつけてくれたタナカ氏(本イベントのスチールカメラマン)にお任せする。

    通常、フレアが出ない設置が基本となるが、今回は設置場所が限定されていること、そして映り込んだ映像が悪くないこともあり、この映像で行くことにしました。
    真剣勝負を間近に見られる撮影は公式戦では少々難しい。もちろん似たような映像はタイトル戦でも存在するが、記録席前にカメラを置くということは今回のようなイベントでしかできない。
  7. カメラ5台を設置したので画面構成を作ります。今回はミキサー (V-8HD) のメモリー機能を使い数パターンを作成します。
    マッチアップ、天カメ+対局者を数パターン、PC映像も入れた解説用、加えてテロップの作成等です。
    これは事前には想定しておきますが、現場で作りこむしかありません。
  8. 会場音響の取り込み
    今回はクリアな音声を配信することを優先し、会場で利用される演者マイクをそのまま取り込みます。Zoom配信用です。
    舞台袖のキャノン (XLR) の出力口から拝借しZoom F6 に入れて、そのまま使えました。PAの仕事をしなくて良いのはワンオペには朗報です。
  9. 会場のLANを借りる
    スピードチェックをし忘れましたが、光回線ということで Zoom (HD) なら全く問題ありません。
    問題は LAN の口からミキサー・配信PCがある舞台袖まで距離があるので有線LANケーブルを引っ張らなければなりません。20mぐらいだと思うのですが念のため60mを用意しておきました。お手伝いに来てくれたパパ様(す)に作業をお願いしました。
  10. 解説者デスクに返しモニターを設置します。
    舞台の下手から上手にケーブルでつなぐため、金屏風の裏を通します。20mぐらいでしょう。HDMI-SDI-HDMIと変換を重ねます。
    特に難しい訳ではありませんが長いケーブルを用意しておかなければなりません。
    設置したものの、解説者はそんなに見ていなかったような?気がします。(プロジェクターで映す大画面の方を見ていた)

以上で設営は何とか完了です。
設営した後にカメラワークやスイッチング、会場プロジェクター投影の切り替え、台本の確認、演者入りしてのカメラ位置の微調整など、作業に追われます。
準備を進めている間に客入れが始まり、本番を迎えることとなります。全く時間が足りません。人手(機材を熟知して臨機応変に調整できるレベル)も足りません。
当たり前ですが舞台袖にいながら客席後方のカメラを動かすことは不可能です。そうなると優先順位をつけて、できないことを切り離していくという判断をすることになります。ワンオペではパーフェクトなクオリティを出せませんが、トータルで考えると60点から80点ぐらいは出せるという戦略です。


*ワンオペとはこれらの作業を一人で行うこと

構成は現場で考える時間は無いので事前に作成しておく


プロデューサーの北尾まどか女流二段、遠山雄亮六段


(スイッチングをする私、パソコンで棋譜を入れる遠山六段)

最後は撤収です。
最短で設営できるように場所や機能別でパッキングした荷物ですが、撤収は速さ優先です。とにかく全てのケーブル類を取り外しカバンに放り込みます。
そのツケは後日、自宅での収納作業へとまわされます。
1時間ほどで撤収を終えることができ、再び車に荷物を詰め込み帰宅です。
雨風はなく、道路もすいていてスムーズに新宿から横浜の自宅まで帰ってこれました。

残念ながら当日の準備が間に合わなかった箇所もあります。観客には大きな影響はありませんがミスもありました。

  • ステージ撮影のホワイトバランス
    各シーンによって舞台照明が変わるので、それを踏まえた調整、あるいはその場で調整できるカメラマンを調達しなければならない
  • 天井カメラのホワイトバランスの揺らぎの解決
    想定していなかったので、トラブルシューティングをしないと分からない
  • 演者へのマイク使用方法の指導
    舞台ディレクターがやりましょう。オールミックスで入ってくるのでミキサー側では調整不可
  • カメラを意識した演者の立ち位置
    カメラに背中を向けないような立ち位置を考えて欲しい。
  • テロップの微調整
    1ミリぐらい調整したかった。本番中はできない。
  • B カメラでの撮影(もともと準備していない)
    余裕があれば舞台裏インタビューとかしたいが、人員不足で無理でした。
  • うっかり Video Assist (手元録画) の電源を切ってしまう
    舞台袖で解説の声が聞こえないという事でヘッドホンを付け替えて渡そうとした際に、電源コードとヘッドホンのコードを間違える。バックアップ装置なので配信などには全く影響は無い。これは舞台袖が暗いがために発生してしまった。なお使用したヘッドホンは芦田音響の ST-90-05-K で、小さい音声でもクリアに聞こえたようで使用した遠山先生も満足されていました。人気のヘッドホンで数か月前に発注して1週間ほど前に届いたばかりでした。早速現場で役に立って良かったです。

 

それでも何とか Production を終えることができて安堵しました。
無理して一人でやらないというのが最善策ですね。手伝ってくれたスタッフには大感謝です。

#知と美

(Kubota)

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